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2017-08

博多座「エリザベート」まだ空席あります - 2016.08.28 Sun

姉に誘われて博多座に東宝ミュージカル「エリザベート」を観に行った。

ミュージカルが特別好きなわけでもない。どっちかというと
日本人が洋モノの題材で朗々と歌い上げながらお芝居するのは
なんとなくしっくりこないと感じるくらいだ。
でも、ヅカファンだった(今は不明)姉にやはり付いてく形で
実は宝塚のべルばら初演を宝塚まで観に行っている。(と、年が…)
松竹の舞台も含めると、なんだかんだと連れられて観に行っている。

福岡に来て、博多座に行く事も増え、歌舞伎では玉様の
60代とは思えない美しさを間近に見れたり、
むしろイベント事の多い東京よりも眼福の機会が増えている。

リニューアルした博多座で観たのはワンピース歌舞伎。
歌舞伎の世界は今こんな事になっているのか、と驚いたが
元々ONE PIECEはイラストで着物着たキャラのものもあったりで、
違和感無かったし、コミックの世界が限られた舞台装置の中で
縦横に表現されてる事に引き込まれた。

160416_1221~02
緞帳がコレです。

そんな中、姉からのお誘い『「エリザベート」観る?』
あーなんかプラチナブロンドの長髪の顔色悪い人が出て来るやつか…
確かオーストリアのシシィも絡む話なんだよね
くらいの前情報しかなかった自分。
唇蒼い長髪の男役とエリザベートの姿を目にする機会があったから、
そのビジュアルイメージばかりしかなかった。

Wキャストで、どっちがいいとかある?と姉に聞かれ、
「えー知らんからどっちでもいいよー」と言いたかったが
一応サクッと調べた。そしたらたまたま昨年の舞台で観た人の感想で
「城田くんトートが眼福でした」とあったので、そうか、イケメンか。
じゃあそっちにしよう。くらいのノリでそっちを希望した。
エリザベートの事は全然気にしてなかった。

でも、事前にいろいろ検索して前情報を仕入れて行かなかったのが
却って正解だった。
そのほうが、初めて観るこの大人気の題材に、完全に浸って観れたからだ。

ウィーンで作られたこの舞台劇「エリザベート」は、
数年後には宝塚で初演され、それから数えると今年で20年。
当然ファン層は厚く、ヅカファンにはヅカファンの思い入れがあり、
ウィーン版とは一部変えられている日本独自の設定への意見もあり、
観客の目が肥えているという意味でこりゃ演じる側のプレッシャーも
大変だろうなあと、後になって思った。

しかし初めて観るというのはこれもまた強み、
何の情報も無いとそういうモロモロにとらわれる事無く、
ただただ目の前の舞台に集中して観れる。
さらに、出演者の事も何にも知らなかった無知な自分。
なのでいちいち比較する事もないから、とりあえずWキャストの
片方に何の不満も無く、飽きる事なく、ここまで物語に引き込まれる事が
あっただろうか…という状態で見入った。素晴らしかった。



ちなみに観に行ったの時のキャストは
エリザベート:蘭乃はな トート:城田優 
フランツ:田代万里生 ゾフィ:香寿たつき 
ルドルフ:古川雄大 ルキーニ:山崎育三郎

姉のカタログを開演前に見ながら、「トートって何語?
言葉の響きが可愛くてドイツ語っぽくない」と聞いたら
「ドイツ語で”死”」と返って来た。
「死」の具現化というよりも東宝版では「黄泉の帝王」と紹介されていて
そうか、シューベルトの魔王みたいな感じかねーと勝手に納得していたのだが…

幕が開いて、空から黒い羽を動かしながら降臨してきたトート閣下は
シューベルトの魔王というにはあまりにも美しく、この世のものではなかった。
いや、黄泉の帝王なんだからそうなんだけど。
長髪のプラチナブロンドに黒のロングコート、ロングブーツ、黒い羽。
かと思うとスケスケフリルシャツや両肩に黒い羽が透けた肌に白の上下…
もう廚二要素てんこ盛りで「セフィロス」と噂されるのも頷けるのだが
(セフィロスとはファイナルファンタジーのキャラです)
城田優はハーフの長身なので、これらの間違うと痛過ぎる要素が
コスプレにもホストにもビジュアル系バンドにもならず、
普段着の様におそろしく似合っている。

いや、似合うとかそういう次元じゃなく、他に沢山出演者がいるのに
トート閣下にスポットが当たってなくてもそこばかり見てしまう。
そして席の場所でそうだったんだろうが、トート閣下が前を見ていると
まるで自分の事を見ているように錯覚するほど、広範囲に閣下の
冷酷かつ熱いレーザービーム視線砲がまき散らされているかのようで
「目が合うと終わりだ」となぜかきょどってしまう。
閣下の目的はあくまでシシィだが、シシィを見ていない時の
閣下の視線も、うっかり目を合わせると黄泉に召されてしまうそんな危険性があった。

こんな黄泉の帝王なら魅力的過ぎてあっという間に人類は死に絶えそうですが。
閣下の甘いお誘いを断固として拒絶できるシシィ無双。

舞台を見ていて、森川久美の漫画「シメール」を思い出した。
19世紀末のパリ、ゲーテの「ファウスト」の舞台で主人公の美しい俳優が
当時は醜悪な姿で演じるのが常だった悪魔、メフィストフェレスを
美しい姿のまま演じて、主役を喰ってしまう程の大評判になる。
舞台を観た男性が
「悪魔が人間を誘惑するものである以上、美しくなきゃ
俺は誘惑されないね」と、彼のメフィストを支持するセリフがある。
悪魔と黄泉の帝王は違うが、トート閣下にもこのメフィストの
役者の話があてはまってしまい、とにかくまずビジュアルに圧倒された。

「平たい顔族」のなかでハーフ長身の彼はまさに異界の者としての存在感があった。
でも見た目だけではなかった。纏う空気が違っていた。

ある場面で、客席そばの通路を、トート閣下がひたりひたりと歩いて来た。
丁度すぐ側を閣下が歩いて来たのだが、190センチの長身に黒上着の彼は
存在感があるのに、後ろ姿だけでも人外感が半端無かった。
大きな男性がブーツで通路を歩いて来るのに、物音がしなかったのだ。
客席に背を向けたまま、舞台に上がろうとした黄泉の帝王は
ほんの少し首を動かし、うっすら唇に笑いを浮かべたように見えたが
それすら役者が演じているというより夢幻のようだった。

そして、歌。
城田優は音大で勉強した人ではないので、そこらへん発声がどうの、
(Wキャストの)井上芳雄じゃないと…と言う人もいると思うし、
いわゆるミュージカル的な歌い方とは違うんだろうが、
声量があって甘い雰囲気のある声は、冷酷な黄泉の帝王が
掟を自ら破って人間の愛を求めてしまうという設定には
とても合っていると感じた。
歌い方に変なクセがなくて、自然にすっと聴ける。
トート閣下の歌にはロック調あり、囁き系あり、となかなか変化に富むが
声に高低の幅もあったし、俺様な内容の歌では男性的な力強さもあって良かった。
なにより劇中でシシィやルドルフに囁くシーン、
これがいいんですわ。

耳元で怪しくウィスパーボイスで囁くは、壁ドンするは、
腰の曲がった爺さん医者に変装してシシィのコルセットはずすは、
その時の衣装はスケスケ胸元フリルだは(だいたいなぜここで上着を脱ぐ?)
冷酷な黄泉の帝王にしてはなかなかあの手この手なのが
「何だコイツなかなかなびかねえな」な閣下の焦りの現れのようで面白い。
一方でにゃんこがネズミを弄ぶような距離感も感じたりで、人間同士の
物語ではない微妙な距離感のようなものが、単に強引に迫る男と
エゴイストな女の駆け引きにならない理由なんだろうか。

一方で、「死」の具現化なら役者は女性でもいいところを、
男性が「黄泉の帝王」を演じる以上、男性的な魅力というのも
そこには欲しいところだが、それも城田トート閣下は良かった。
それも一方的に迫りまくるオスというのとも違う、人外キャラとしての
距離感と神秘。これを観る前には、彼がホスト役で出演した映画は
観ない方がいいと思います。

ウィーン版ではトートはあくまで「死」の具現化として表現され、
日本では男役トップが主役を演じる都合でトートは黄泉の帝王と
設定が変えられ、トートが主役になったらしい。
だから宝塚版はトートとシシィのラブストーリーという趣が強いが
東宝版ではエリザベートが主役。
宝塚版は見ていないが、ハプスブルグ家崩壊とその後の
ヨーロッパを覆う暗い未来という歴史背景の表現は、
東宝版の方がウィーン版のように演出がされているようだ。
正直、巨大なハーケンクロイツが出て来た時には、
ここまでやっちゃっていいの?と思った。

しかし東宝版でもトートは「死」そのものではなく宝塚同様黄泉の帝王。
ウィーン版のように、シシィが死んだ後亡骸を雑に扱ったり、
冷酷に笑ったりはしない。(これも演出により違うんでしょうが)
キリスト教的な死生観の違いもあるかもだが、トート閣下が
情熱的に迫った挙げ句、獲物を得たらこの冷たさ、では日本では
作品としてここまでロングランにならなかったかも。

トートが冷酷な存在であることは間違い無いが、ラブストーリーの要素は
宝塚ほどでは無いが残し、歴史描写は宝塚より増やし、
そして主役はエリザベートなのが東宝版。
だから、エリザベートの強さが大事になる。
そういう意味では、城田トート閣下の冷たくも甘い囁きにも屈せず
身長差のありすぎる壁ドンにも押し倒しにも負けない蘭乃シシィは、
自分的にはとても楽しめた。

実際エリザベートは宮廷に入ってからエゴイスト&変人ぶりに
(当時の宮廷では一層そう思われただろう)拍車がかかって
いったわけだが、最初から貫禄ある皇后だったわけでは勿論無く、
お転婆で、自由人の父親に憧れるちょっと危うげな少女像に
蘭乃シシィはぴったりだった。
だから、そんな頼りない女の子が、ちょっと閣下が迫れば簡単におちそうな
そんな女の子が、案外やりおる…という意味でも、閣下のご機嫌斜め感が
よりリアルになってくる。

歌が高音で大丈夫かと思う所も合ったけど、1幕の終わり、
シシィが「私だけに」を歌う場面では、それまでの少女時代の
表情からがわりと顔が変わり、正直驚いた。
人間は変化する生きもの、というのを閣下(と旦那フランツ)に
堂々と見せる、この自我の目覚めはアレです、
「ガラスの仮面」のマヤの顔に水風船がぶつかって破裂する、
あんなショックでした。

城田トートも、2010年の初演時と比べて歌が格段に良くなった
らしいし、演出や舞台美術、衣装も再演を経て変化している。
同じ役でも演じ手が違えば違う印象になるのも、Wキャストの面白さ。

ファンには念願だったらしいDVDが、今年のキャストで発売が決定とかで
熱にうかされた自分は早速予約したのだが、
トートはWキャストのお2人でそれぞれWhiteとBlack版と分かれているのに
主役のシシィが…どちらの版ももう片方のキャストの方になってて、
蘭乃シシィが通しでは入っていない。
これってどうなのかなあ。
いろいろ言われているらしいですが、DVDを出すのなら、主役のWキャストは
どちらも等しい扱いにすべきだったのでは。
買う前から、お客に選択の自由が無いというのも、なんだかなあと
思う訳です。

まあそんなわけで、だらだらと思うがまま書き連ねましたが、
だまされたと思って城田トート、一回観て下さい。
しかし博多座、9月上旬に千秋楽なのに
その直前の数日、まだ残席があるようなんですが…
(8/28時点)
大人気で電話予約はつながらない、チケット大量購入業者の
転売が問題になっているこの舞台。帝劇はほんとに席がとれなかったらしい。
ぜひぜひ、多少席が悪かろうと、オペラグラス持参で博多座へ
観に行っていただきたい。
舞台で変な席で見るより、TVや動画サイトで見る方がいいという
意見もわかるのだが、実際にその同じ会場で観るというのは
空気感を感じるということで、それはどうやっても後から映像を
見るのでは味わえない高揚感。

ん〜、チケットまだあるなら、また観に行こうかな
…とすっかり閣下の毒に踊らされている今日この頃。
160820_1522~01
城田トート。大勢が、この博多座の柱の前で写メしてました。
後ろの柱にルキーニいるのに…誰も撮らないのか?







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ケロをこよなく愛する玉川上水ほとりの住人です。
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