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2017-08

パエトーン - 2011.06.05 Sun

マンガ好きな自分が中学からよく読んでいた山岸凉子。

この人の細い線があやしい魅力を放っていた
特に70年代から80年代初頭にかけての作品が好きだ。

古くから深層心理やジェンダー問題といったものを扱い、
それらは「これはこういうものだ」という「常識」を
疑わせるものだった。
こんな内容を描けるなんて、
いろいろ見透かされそうな怖い人だな…
と思っていたら80年代には夜のTVにも出演していた。
記憶に間違いが無ければ、教育TVかなにかの「YOU」という
大友克洋がタイトルイラスト描いていた番組だっただろうか。
ほっそりとした和服の似合う人だった。

で、彼女の作品に「パエトーン」というのがある。
1988年にASUKAで初出誌された。

ゼウスでも扱えない、大地に光を与える「日輪の馬車」を
唯一御せる太陽神アポロ。その息子パエトーンが、
能力も無いのに見栄のために馬車を駆る。
その結果誰にも制御できなくなり、地上の万物が焼き尽くされそうになる。
ゼウスが仕方無く稲妻を投げつけ、馬車ごとパエトーンを処分…

というギリシャ神話の話を序章に、日本の原発の危険性を問い、
即時停止を訴える内容だった。

自分が今持っているのは文春文庫版だが、
今は違う出版社から出ているようだ。
電子版もあるらしい。←クリック。

この作品で、プルトニウムは冥王、プルトーンなのだと知った。
そして東電のあのマークの由来も。

参考文献にはあの広瀬隆をはじめ、
溝口建二、内橋克人の著作が並ぶ。

この作品が描かれた1988年当時は国内の原発は36基。
1990年迄には44基に増やす予定だとそこにはあった。
随分と急ピッチだ。

そして今現在54基が日本にはある。
今の政権が「推進」と言いながら実際は今現在新規で増えてはいないが
(建設中、計画中はあるが)
今回こんな事になって、少なくとも「推進」はあり得ない。
まともな感性ならば。

推進しなければいけない理由を、今のそして今後政権が変わっても
国民にナットクのいく説明ができるとは到底思えない。
今までの説明がすべてむなしく響くだけなのだから。

DSC_00622.jpg

原発に限らない。
いわゆる迷惑施設についても、何事も、
地域住民には本当のリスクを教えず御用学者で言いくるめ、
職や交付金、あるいは補償金、インフラ整備の恩恵で
考えさせないようにしてきた、ほっかむりをさせてきた(いる)事は
山の様にある。


選挙民に対し「B層」←クリック。と大変失礼な事を言っていたのは
どの政権だったか。
世界地図で見ればインクの染みのような小さな島国に
どうしてここまで、世界第3位の数の原発が出来てきたのか。

それを「支持」したのは、
「受入れて」来たのは自分達だ。

廃プラと同じ。「反対」しなければ現実は「肯定」と同じ。
例えホントは嫌でも。意見言わなきゃ聞いてもらえるワケ無い。

学生当時、「パエトーン」を読んで、なんとも問題の大きさに
愕然としながらも、具体的にはなにもしてこなかった自分。
今あらためてこのマンガを読み、暴走した日輪の馬車の
「炎を吹く」駿馬が4頭であることも、現実と照らして
恐ろし過ぎるものを感じている。

受入れ地元の「関わりがあるから何も言えない」というのは
日本的な心理なのかと思ったら違っていて、
例えばスペインの原発の地元、イギリスの
地元でも同様の反応があると記事を読んだ。
それでも一部には、全く関係ないガイジンだしと思って
本音を語ってくれた人が新聞記者だと知るや、
「こいつに何も言うな!」と居合わせた他の仲間に叫ぶ姿。

それはまぎれもなく
「言いたい事はあるが言えない」
の裏返しだ。

こういうもやもやを抱え、事故の心配を抱え、
環境と人的被害を通常運転でも引き起こしている
そんな発電方法を、これからも選択するのか?

まったく、割に合わずわずありえない。
よくコストが問題にされるが、将来的なリスクの前に
このくらいのコストは吹っ飛ぶのは、今回の事故で明らかになったではないか。

DSC_00623.jpg

5/29のニュースで、ドイツで16万人規模の脱原発デモが扱われていた。←クリック。
以前の「脱原発」から温暖化対策もあって「推進」にシフトしていた
メルケル政権も、国民のビビッドな反応で選挙が危うくなったと見るや
すぐさま「10年後に全ての原発を廃止」と打ち出した。
このあたりは原子力への理解というよりは、むしろ現実的視点からだと
思わせる。それでも、180度の方向転換をすぐやるのがすごいところだし
政権存続のためだとしても、その結果原発が廃止されるならオーライではないか。

それでも、「10年じゃなくもっと早くやれ」
とデモを続けるドイツ人、明快で容赦ない…

DSC_00624.jpg

ひるがえって日本。
今までは、政府の側から、電力会社の側から知らされていなかった事も
これからはそうはいかないだろう。
これまで警鐘を鳴らして来てくれた方々の話や著作も
自分でその気になれば調べて読む事ができる。
そして、影響力を持つには、同じ考えの政治家に投票し、
真のクリーンエネルギーに投資することだ。

「がんばる」というのは、そういうことじゃないのか?
少なくとも東京で電気を使っている自分にはそう思える。
日本がこの先も住めて、今より安心できるようになるのか、
今まで通りでいいと思うかは、
自分で考えて選択できる筈だ。

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● COMMENT ●

カリガリ博士

その時期の山岸涼子の作品は、カリガリ博士のように、最後に視点が逆転し、今までこういう風に話が語られてきたけど、実は…というのが多かったような気がします。
規範、人の道(たとえば他人様のものを盗ってはいけない、など)というのは別として、世の中にはいろいろな考え方があって、自分とは異なった視点から見たとき今まで当たり前と思ってきた考え方がどのようにうつるのか、そしてそれを受けとめることができるのかが常に問われていると思います。
こわいのは、すべてが同じ方向を向いてしまって、異なる意見を排除してしまう風潮。
山岸涼子や原発の話とはちょっと違うかもしれないけど、元は同じなのかも、と思ってしまいました。

Re: カリガリ博士

> その時期の山岸涼子の作品は、カリガリ博士のように、最後に視点が逆転し、今までこういう風に話が語られてきたけど、実は…というのが多かったような気がします。
「悪夢」とかあのあたりの作品が好きです。絵柄も。

自治体などがいわゆる「迷惑施設」を造ろうとする時に、
原発とまったく同じような事を「周辺住民」にしています。
御用学者を呼んでの「安全だ」「科学的に見ても問題とは言えない」の説明。
予定地が私有地ならばお金を積む。
「他にも同様の施設があるが問題は無い」
「スケールメリット」
異論を言う人にはワケ分からない役人的文法でごまかして
まったく論点をすりかえる。
「反対ならば代替案を出せ」

これらは、すべて私が廃プラ施設の事で見聞きしました。
原発と何が違うでしょうか。

これまで、異論を許そうとしなかった土壌が
あまりにも普通に、どこでもまかり通って来ていたと思います。
そして、それに慣れてしまっている事が、怖いと思います。


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ケロをこよなく愛する玉川上水ほとりの住人です。
庭をヒキガエル様の根城にしていただきたいけど
目下果たせず。

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