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2017-08

無報酬の仕事 - 2013.10.22 Tue

やなせたかし氏が亡くなって、漫画家の吉田戦車氏が
つぶやいた内容がなかなか熱い反応になっているようだ。

あんな大家が沢山の無報酬のお仕事を
受けていたというのは驚きだ。
それがいつ頃の話なのか詳細は知らないが
すっかり有名作家になってからの話だとすれば、
「お支払いはできませんが」と言いながら依頼をしてきた
自治体や企業などの団体の面の皮は厚すぎると思う。

もし、やなせ氏が有名作家になった後の依頼だとすれば
そこには「あのやなせ先生に描いていただきました」
と主張したい狙いが、どこかにちょっとはあるだろう。
もちろん純粋にいいキャラを作ってくれるから、
裏切らない仕上がりのお仕事をしてくれるから、
とふんで依頼して来る人達もいるのだろう。
だとすれば、ますますなぜ無報酬なのかがよくわからん。

ひと頃「公募ガイド」を買ってめぼしい公募にちくちく作品を
送っては結果見てかっくし、を繰り返していた自分だが
確かあるときその中にやなせ氏の作品が載っているのを
見た記憶がある。
それもそういった無報酬のお仕事の中の1つだったのかも
しれないと思うとなんともいいがたいものがある。

公募ガイドを見るとよくもまあ全国いわゆる「ゆるキャラ」作りを
いまだにやろうとしている団体があるもんだと
ある意味感心する。
今自分がいる場所の隣町もつい最近妙な着ぐるみを祭りに登場させていたが
まさか公募していないだろう、していてもプロが作ったもんじゃないだろう
というレベルのものだった。
でも、まあ、それでいいのだ。
地元の人に愛されるなら着ぐるみの出来がおかしかろうが
デザインがこなれていなくても全く問題無い。

問題なのは、何かのキャラクターを作って着ぐるみを投入すれば
町おこしのひとつになるかもしれないと完全横並びの考えしかできない
超マンネリな自治体だ。
何かのアイコンが欲しいのはわかるが、その着ぐるみを見に
わざわざ電車に乗って遠いところから客を呼べるような町なのか。
そのイラストが付いているからサブレや饅頭が売れるのか。
そうじゃなくて問題はどこでもある、保存期間ばかり長く歴史も特徴もなく
美味しくもないサブレや饅頭の類いなのに。

131002_1149.jpg
お彼岸は遠くに去ったのにまだ日中は夏のような光線です。

自治体や企業が広く公募するのは、端的に言えば
費用がかからないからだ。
そりゃ審査の後にセレモニーするとか表彰式で特産品用意するとか
そんな団体もあるし
もちろん対象作品には、大抵は低くても数万円の報酬を用意するから
無償で公募するということはない筈だが、
それでも、公募が多いのはプロに自分から依頼すると
桁の違う金額が発生からだとしか思えない。
そして、権利の問題も、買い取りであっさりした線引きが出来て
もめる心配がないというのも公募の利点だろう。

やなせ氏への無報酬の依頼が、イラスト料としては無報酬でも
それ以外に何らかの対応があったのか、など詳しくは知らない。
これが、やなせ氏が個人的に付き合いがあって、その人達の頼みなら
いいよ、でやっちゃってた事なら個人の問題なので他人がどうこう
言う事ではないのだが、それが数件ではなかったから吉田戦車が怒っている。

困るのは、「やなせ先生にも(タダで)お引き受けいただいたので
あなたにもご協力を是非」てなかんじで、他のデザイナーの方々にも
同様の無報酬手法が通じると思って実際そうやってしまう人達が
いるのではないか…ということなんじゃないかと思う。

表現する人は、自分の作品が世に出て不特定多数の人達の目に
ふれるなら、タダでもやってみたいという気持ちがどこかにあるだろうし
商売っ気抜きでやらせて下さい!と自ら思う様な仕事だって
世の中にあるのは理解できる。

でも、それはその作り手の個人的な感情でそうしているのであって、
毎度毎度そういうわけではないし、
頼む側としてはタダでできるならこんなにおいしい話はない。

「予算がないからタダでお仕事して下さい」というのは
その依頼者の勝手な都合であり、それが受入れられるのは
その仕事にそれでも応じたいと思う程の何かがあるからなんだろうが
それがいつも通用すると思って、あるいはあそこがタダで頼んだらしいからウチも、
というふうにつながっていったのなら、それはとても浅ましい事だと思う。
自治体は予算が無いから、を理由にするなら相応のやり方をとればいい話。

やなせ氏はフリーになってすぐに作家として成功したわけではないから
そのあたりの金銭的な交渉は、相手の要求を優先する事が多かったかもしれない。
フリーで仕事をするのは、一度断ると2度は無いし
とにかく使ってもらえないと話にならないから。
でも、すっかり有名になった後の仕事がタダだとすれば、
もう金銭的にガツガツしなくてもいい状態だったか、
大家だと思っていないからいいですよ、というお人好しな感覚だったのか、
あるいは子供達向けのものなら、ひたすら子供達に受入れられるなら
報酬はいらないという神様のようなアンパンマンのような気持ちだったのか…

「やなせ先生個人の問題なんだしお亡くなりになった直後に
こういう話題を出すなんて」という人も中にはいるようだが、
自分には「タダ」の理由が、気になる。
そこには結局、安直な理由があるのでは、と思えるからだ。

131004_1752.jpg
なんか面白いリズムの雲。

OEMの仕事をしていた時に、元になる原型の試作費が発生する。
昔は支払われていたが、だんだんと費用削減でその費用を払えません、
という会社も出て来た。
生産を決定するには試作をして見積もりをとるわけだが、その試作代を
とれないとなると、日本国内のパターンナーさんや原型師さんには
もう発注はできないということだ。
途中で生産しないとなっても、試作作成費用は払わないといけないし
それには2桁万円のお金がかかる。この金額は大きい。
そこを削ろうと思えば、生産を通常頼んでいる中国の工場の試作班の人に直に頼むことになる。
工場関係者であれば、生産を普段頼んでいるという関係上
引き受けてくれやすい。

こうやって、国内の原型師さんやパターンナーさんへ発注する仕事は、
自分が在籍していた15、6年の間に徐々に、しかし確実に減って行った。
これは、製品のパッケージのグラフィックデザインではもっと顕著だった。

こうやって、費用を削る事で、「ただでもやります」というところに
自然と仕事は流れ、それを生業としてきた人から
結果的に仕事を奪って行くことになっていくのを、依頼される側と依頼する側の
両方をちょっとの間経験した自分は見て来た。
製品の値段を抑えるため、消費者のためと思ってやったことが
結果的にその製品を作るノウハウを持っている国内の業者関係者の仕事を減らしていったのだ。
就職した時にはまだ国内生産をしていた業者も、それから10年内にはすっかり
話を聞かなくなってしまった。
一度安く値崩れすると、その価格でしか消費者はふりむかなくなる。(と、企業は考える)
そうなると削られるのはどこか。
結果的に、内部崩壊して行く。すべての業者で進行形の悩みだと思う。


だから、今回のやなせ氏の話は、
「個人の話じゃん」とは流せないものを、どうしても感じてしまう。
また、「すべて金かよ」というのとは全く違う次元の話だ。

前述の中国の工場でのサンプル製作も、最初はタダだったが、
そのうち一定の製作料をとるようになった。
同じ考えの発注者が増えたのだろう。
そして、生産にまでならない事が続けば、サンプルだけタダで、というのは
受けたくないというのは、当然の話だと思う。
そういうことなのだ。

タダほど高いものはない、と言うが
プロが尊重されないという時流が公募ばやりってことなんだろうか。
もっとも、イメージシンボルやキャラの公募で
数多くの作品を応募して採用されている人の中には
現役のデザイナーがいるし、そういう人の中にも殆ど使い回しというか
コンセプトなんぞどうでもいいのかも、と思える作品もあったりするので
募集する側と応募する側両方の思惑が実にユルいところでマッチングしているのなら、
それもいいってことなのかなと思った今日この頃。

でももういいかげん、ゆるキャラはやめません?


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