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2017-08

アナログの迫力 - 2014.06.22 Sun

福岡に来て良かったと思う事のひとつに、
絵画展などの展示イベントへの行き易さと
見やすさがある。

もちろんアクセスの良さ悪さは住んでいる地域にもよるが、
なんで見やすいと思うのかは、結局のところ、
東京みたいにやたらと混んでないからだ。

そして、情報が多すぎないので、却ってコレを見に行こう、
というふうに最初から目的が絞れる。
これは東京ではもっと選択肢があるが福岡では限られる
という事でもあるのだが、面白い展示があっちでもこっちでも
というのに慣れっこになっていて結局行ってないというケースが
多かった自分のような人間には、このくらいシンプルな情報の
方が、取捨選択がしやすくていいようだ。

仕事で常に触れているジャンルのものは却ってプライベートでは
遠ざけてしまうのとは反対というのか、
少しくらい飢えているほうが興味を持てるのかもしれない。

先週は家族がチケットを持っていたので
福岡市博物館のサザエさん展とアジア美術館の山本二三展を
はしごした。
アクセスが便利なのは博多駅からも歩いて行けるアジア美術館だが
市博物館も周辺は高級マンションなどが並ぶ百道浜にあって、
時々こういう展示に行く時でないと行かないから物珍しさもあって
これはこれで面白かった。

東京の大学の同級生が新聞社に入り福岡勤務になった時に
百道のあたりに住んでいた。
「ちょっと行けばきれいな海も山もある都会。
奇跡的な街だね」とその彼が年賀状に書いて来たことがあった。
当時はまだ、はじけたバブルの影響が中央と時間差があったからかもしれない。
しかし美大出で政治部に入った、変わり者で常日頃難しい事を
言っていた皮肉屋な東京出身の彼がこんなふうに直裁に評価するのは
珍しかった。私の出身が福岡と知っているとしても。
そんな「奇跡的な」街の細かい部分まで市になって数年の田舎にいる自分が
わかる訳はないのだが、首都圏に例えるならなんだか幕張とかお台場とか
立川から高松にかけての街並をみているようなそんな感じの場所だ。

今はそんな場所になった百道のあたりだが、作者の長谷川町子が
戦後すぐにサザエさんのキャラクター構成を考えていたのは
まさにこの百道の海を散策していた時で、そのため名前が
海産物系になったのだという。
サザエさんはそれこそ幼稚園の頃から読んでいたし
その後連載されていた作者の打ち明け話で、作者が子供の頃
福岡にいたという事も知っていたが、百道というゆかりの地の
事はなぜかすっかり忘れていて、どうりでここに「サザエさん通り」が
あるのか今更ながら納得した。

そして長谷川町子が仕事以外で、趣味で描いていた岩絵の具の絵を見て
驚いた。とてもリアルで精緻で繊細なタッチの人物画。
新聞漫画連載のストレスから解放されるための趣味にしては
丁寧すぎる作品だった。

もうひとつ思ったのは、昔の作家は動物の表現がとても上手いということ。
漫画以外に絵本などの仕事が展示されていて、戦前の印刷の
意外な精度の良さにも驚いたが、タヌキや犬ネコといった動物の
コミカルな表現が、10代20代前半とは思えない手慣れた感があった。
観察眼だけではない現代的なセンスに、いかん、長谷川町子舐めてたと
ちょっと反省した。
サザエさんやいじわるばあさん以外の仕事や
時代の変遷との対比がわかる展示内容も面白かった。
確かうちにあった9巻ではハマグリの中に軟膏が入っていたし
輪タクがまだ出て来てた記憶。
ゴミ箱の変遷ひとつとっても、作者の観察眼のスルドさを感じた。


もうひとつの山本二三展、これは以前ジブリのレイアウト展と同じ
アジア美術館での展示だが、ジブリの作品が評価されるのに
背景美術の美しさもあり、その立役者の原画が見られるとあっては
行かない訳にはいかない。

…などと偉そうに書いておきながら知らなかった、
「ニ三雲」という言葉があることを。
そういわれるほど、山本氏の描く雲は特徴的だということなんだろうが
確かにジブリの(特にラピュタ)作品には風と雲がつきものだ。

実際に使われた背景画も大迫力だったが、
それを描いて行くためのイメージボードやスケッチが
これで出来上がりじゃないのかと思う程のクオリティで
プロの仕事の容赦なさに頭痛がしそうだった。
(実際見て疲れた。描く過程を想像すると疲れないわけにはいかない)
背景はもっと大きめの紙に描いているものとばかり思ってたが
実際は予想外に小さかった。
実際使う部分はA4より小さい範囲。それより少しばかり
周囲分も描いてあるとはいえ、思ったより小さい。
それなのに、無茶苦茶空間の広がりがある。
一方で木の葉の一枚一枚、苔や水に浸かってる枝のぬめり、
そういう細かい部分まで質感が伝わって来る精密さ。

今はデジタル画で、仕上がりサイズやレイアウト、色調を簡単に
途中や最後で変えることができるが、背景は紙に絵の具で描くのだから
最初からきっちり仕上がりが予想されている部分がないと進めにくい。
塗りの手際も求められる。
長谷川町子の原稿を見ても感じたが、デジタルが入る前は
当たり前のようにやっていた事が、今では難しかったり面倒な
技になっている部分が相当あると思う。
デジタル手法が一般的になって、ある意味「ヘタ」に
なってしまっている部分を、
一応美大を出ている自分でも紙に鉛筆で描くと痛切に感じるのだ。
うーん、これは「退化」なのかも…

電気がなければ描けないデジ絵ではない、アナログの技術を
無くしちゃいけないなあと反省した一日。

(山本二三展は7/6まで、サザエさん展は7/13まで、
まだの方はぜひぜひ)



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